手巻き時計は、面倒じゃない。“関われる”時計だ。

手巻き時計は、面倒じゃない。“関われる”時計だ。

手巻き時計は、面倒じゃない。“関われる”時計だ。

クォーツの時計は、精度と実用性の完成形に近い。
電池で水晶を振動させ、ICが秒のリズムを刻み、ステップモーターが歯車を一段ずつ送る。月差±20秒前後という精度は、大量生産であっても当たり前のように手に入る。

それでも機械式を選ぶ人がいる。

しかも、その中で「あえて手巻き」を指名する人がいる。

理由は単純に“古いから”でも“希少だから”でもない。

手巻きは、時計を「使う」だけで終わらせず、時計と“向き合う余白”を残してくれるからだ。


1. まず機械式の面白さは「時間を作る工程」にある

機械式の時計は、主ゼンマイの力を輪列(歯車の流れ)へ渡し、ガンギ車・アンクル・テンプ・ヒゲゼンマイで構成される脱進機が、そのエネルギーを“等間隔の刻み”に整える。

ゼンマイの力は本来、均一ではない。巻き上げ直後は強く、ほどけていくにつれて弱まっていく。
それでも時計が正確に時を刻めるのは、脱進機がエネルギーを間欠的に解放し制御することで、テンプの往復運動に一定の周期を与えているからである。

クォーツが「正確な基準に合わせる」仕組みだとしたら、
機械式は「仕組みそのものがリズムを生む」道具だ。ここにロマンと沼がある。


2. 自動巻きと手巻き:同じ機械式でも“性格”が違う

手巻きと自動巻きは、動力が同じ(ゼンマイ)でも、時計との距離感が変わる。

自動巻き:

ローター(回転錘)が腕の動きで回り、その回転が歯車を介してゼンマイを巻き上げる。
着け続けていれば止まりにくいのが最大の強み。一方でローター機構の分、構造は増え、ムーブメントの厚みや重量が増えやすい傾向がある。

手巻き:

ローターを持たず、リュウズ操作でゼンマイを巻く。
その代わり、構造がシンプルで、設計の自由度が高い。薄く、軽く、重心も整えやすい。
そして何より、"自分で時計に動力を与える”感覚が残る。


3. 手巻きの良さ①:巻く行為が、点検にもなる

手巻きは止まる。だから巻く。この“ひと手間”が、実は時計好きの満足感を底上げする。

リュウズを回すと、指先には微細な抵抗の変化とともに、一定の間隔でクリック感が返ってくる。
これはラチェット車の歯をコハゼが一つずつ乗り越える際に生じるもので、ゼンマイへトルクが確実に伝達され、同時に逆転が防止されている証でもある。

この機械的なフィードバックは、電気駆動の時計には存在しない、純粋な機械式ならではの感触だ。

これは単なる操作ではなく、時計と意思疎通している感覚に近い。

さらに、毎日(あるいは数日に一度)触れることで変化に気づきやすい。

「今日は巻きが重い」「引っかかりがある」「音が違う」──そういう小さな違和感に早く気づけるのは、手巻きならではの利点だ。

 

4. 手巻きの良さ②:薄さ・軽さは“美学”であり“合理性”

ローターがない。

この一点が、手巻きに独特の厳粛さを与える。

・ケースを薄く設計しやすい

・重量を抑えやすい

・手首の上での収まりが良くなる

・ジャケットの袖口に引っかかりにくい

見た目のスマートさだけでなく、着けたとき腕への負担が減るのも大きい。

薄型で端正なドレスウォッチに手巻きが多いのは、“雰囲気”だけではなく構造の必然でもある。

 

5. 手巻きの良さ③:裏側の景色が、途切れない

シースルーバックの本当の面白さは、ムーブメントを「部分」ではなく構成(レイアウト)として一望できることにある。

自動巻きの場合、ローターがムーブメントの半分近い面積を覆うので(マイクロローターはその限りではない)ローターそのものの造形や装飾を楽しめる反面、輪列や受けの配置、仕上げの連続性を“視覚的に追う”にはどうしても遮蔽物として介在してしまう。

一方の手巻きは、ローターが存在しない分、視界がクリアだ。

ブリッジのライン取り、面取りの立ち上がり、筋目(コート・ド・ジュネーブなど)の方向性、歯車の噛み合いと軸受(ルビー)の並びが、途切れずに連続的な美しさとして見える。

さらに、巻き上げ系の機構─ラチェット車/角穴車、コハゼ、香箱まわりの造形や仕上げも、視界の中心に置かれることが多い。

そして何より、テンプの振動が視界を“魅了する”。

テンプ、ひげゼンマイ、ガンギとアンクル。

この一連の運動が、ローターに遮られず、ムーブメントの中で見える。

「見せる前提」で設計された手巻きが、裏側の仕上げや構成で勝負してくることが多い─というのは、実感として確かにある。


6. 精度の話:手巻きは“コンディションで表情が変わる”

クォーツが高精度なのは前提として、機械式は精度の世界が違う。

機械式は、温度・姿勢・摩擦・潤滑・ゼンマイのトルク変化など、条件で結果が揺れる。

手巻きは特に、巻き上げ量が精度に影響しやすい。

ゼンマイが十分に巻かれているときは振り角(テンプの動く角度)が安定しやすいが、巻き上げの残量が減ると動きが変わる。

だからこそ、手巻き好きの方は「毎日同じ時間に巻く」という作法を好む。

精度を“押さえ込む”というより、時計の機嫌をとる感覚に近い。

 

7. 手巻きの巻き方:気持ちよく、壊さないためのコツ

基本はリュウズを時計回りで巻き上げ(反時計回りで巻き上がらないモデルが多い)

目安は20〜30回(パワーリザーブ設計で変わる)

途中で硬くなり、これ以上回らない“巻き止まり”を感じたら止める


無理に巻き続けるのは禁物。

「巻けない」「急に重い」「引っかかる」などが出たら、いったん止めて点検に回した方が安全だ。


8. “巻けない”の背景:小さな不調が大ごとになる前に

手巻きが巻けなくなる原因は、単純な故障だけではない。
汚れや錆び、油切れ、リュウズ周りへの異物侵入、防水パッキンの劣化など、入口はいくつもある。

巻き上げの効率が落ちた、リュウズの動きが渋い、パワーリザーブが短くなった。
このあたりはオーバーホールのサインとして分かりやすい。

無理に操作を続けると、部品破損につながることもあるので、違和感を“早めに止める”のが正解。

 

9. オーバーホールは「壊れてから」ではなく「育てる」ために

機械式は、分解・洗浄・注油・調整でコンディションが戻る。
防水パッキンの交換など、外装側のケアも合わせて行えるのがオーバーホールの価値だ。

目安としては3年に1回程度と言われることが多いが、使用環境や使用頻度で前後する。

手巻きは触れる頻度が高い分、変化に気づきやすい。

そのメリットを活かして、症状が軽いうちに整えていくのが一番スマートだ。


10. 手巻きが似合う人

手巻きは「万人に便利」な時計ではない。
でも、刺さる人には深く刺さる。

・時計を“道具”以上に、仕組みとして楽しみたい

・薄型で端正な着け心地が好き

・裏側の景色をじっくり見たい

・複数本をローテーションしていて、止まることに抵抗がない

・毎日少しだけ、手をかけることがむしろ楽しい

手巻きは、時計を“所有”から“関係”へ変えてくれる。


巻き上げの数十秒が、あなたの一日を少しだけ整える。


そんな時計が一本あってもいい。

コントワーヌで見つける、手巻き式時計の魅力
TUTIMA パトリア(Patria)

手巻きの魅力は、理屈だけでは語りきれない。
巻いたときのクリックの密度、巻き止まりの感触、裏スケで見えるテンプの鼓動。
そして、薄型ケースが作る収まりの良さ——これらは実際に触れた瞬間に腑に落ちる。

TUTIMA パトリアのように、手巻きの構造美と静かな品格が噛み合った一本は、まさに「関われる時計」の代表格。
写真では伝わりきらない部分こそ、店頭で体験してほしい。

 

正規代理店 コントワーヌ(CONTÉVANOU)

コントワーヌ(CONTÉVANOU)は、東京都渋谷区・西参道に店舗を構える時計・宝飾の正規代理店です。


MINASEの魅力であるザラツ研磨による歪みのない鏡面と、シャープな稜線は、写真やスペックだけでは伝わりきらない領域。実機を手に取り、光の走り方や面の精度までじっくりご確認いただけます。

購入前のご相談から、正規代理店としてのアフターサービス、修理・メンテナンスの窓口まで対応。落ち着いた空間で、時計本来の完成度と向き合える店舗です。来店予約も承っております。

店舗情報
〒151-0053
東京都渋谷区代々木4丁目28-7 西参道テラスE1
TEL:03-3299-8008
WEB:https://www.contevanou.com/

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