ケース素材の沼:チタンは「軽い」だけでは語れない
チタンは「軽い」だけでは語れない

チタンの腕時計が普及してきている今。
語るべきは、グレード2とグレード5です。
チタンケースというと「軽い」「サビにくい」「アレルギーに優しい」といった言葉がまず挙がります。
もちろん正しいですが、チタンの面白さは、そこから先にあります。
数字で見ると“異常値”に近い金属
チタンが腕時計に向いている理由は、物性そのものがかなり特徴的だからです。
・重量は鉄・ステンレスの約60%程度
・比強度が非常に高く、軽量でも高い強度を確保しやすい
・弾性率が低く、しなりやすい性質があります
→ 衝撃を「受け止める」より「いなす」方向に働きやすい
・耐食性(サビ、腐食、変質を起こしにくい)が極めて高い
・イオン溶出(金属が汗でイオン化して溶け出す現象)が少ないため、金属アレルギーが起きにくい傾向がある
ここまで揃っている金属は、実はかなり珍しいです。
腕時計にとって理想的……と言いたいところですが、ここで問題が出てきます。
普及が遅れた理由は「加工の難しさ」
チタンが本格的に時計業界で使われ始めたのは、おおよそ1980年前後からです。
市販モデルとして先行したのは1970年代の日本(シチズン、セイコー)で、その後80年代にスイス勢が追随し、いまではすっかり一般的な素材になりました。
ただ、普及まで時間がかかったのは、単純に加工が難しかったからです。
・切削時に工具が負けやすい
・熱を持ちやすく、寸法が安定しにくい
・仕上げムラが出やすい
「軽いのに作りにくい」これが、チタン最大の弱点でした。
時計で使われるチタンは主に2つ
現在、腕時計でよく使われているチタンは大きく2種類に分けられます。
・グレード2(Grade 2)=純チタン
・グレード5(Grade 5)=チタン合金(Ti(チタン)-6Al(アルミニウム)-4V(パナジウム))
この違いが、装着感だけではなく、「仕上がりの質」に直結します。
グレード2:素材としては理想的ですが、時計としては難物です
グレード2はいわゆる純チタンです。軽さ・耐食性・低アレルギー性といった「チタンらしさ」が最も味わえます。
一方で、時計にすると課題が出ます。
・切削精度が安定しにくい
・シャープな稜線を保ちにくい
・均一なヘアラインやポリッシュが成立しづらい
このため、かつては「チタンは機能的だが、質感でスチールに劣る」と言われることもありました。
グレード5:時計として“成立”させたチタンです
一方のグレード5は合金です。代表的な組成は以下の通りです。
・チタン 約90%
・アルミニウム 約6%
・バナジウム 約4%
合金化によって、時計にとって重要な変化が起こります。
・色味がステンレスに近づきやすい
・表面硬度が上がり、耐傷性が向上しやすい
・寸法安定性が高く、加工精度を出しやすい
・純チタンでは難しかった、シャープな線とポリッシュ加工が行いやすい
結果として、「チタンなのに高級に見える」ケースが現実的に作れるようになりました。
近年、多くのメーカーがグレード5を採用するのは、このためです。
腕時計素材として「上位」はどちらでしょうか
結論はシンプルです。
・素材の純粋さ、チタンらしさ、低アレルギー性 → グレード2
・時計としての外観、耐久性 → グレード5
現実的には、「総合点を出しやすいので=グレード5が上位扱い」というのが、業界の共通認識に近いと思います。
本当に差が出るのは「同じグレード5の中」
マニアが見るべきポイントは、ここです。
・仕上げのエッジが甘くなっていないか
・サテンとポリッシュの境界が明確になっているか
・面が歪まず、均一に光を拾っているか
・チタン特有のムラを消し切れているか
・写真ではなく、実物でみていい意味での緊張感を感じか
チタンは素材名よりも、「どのブランドが、どこまで攻めて仕上げたか」で別物になります。
この分野で、派手な宣伝をしないドイツ系メーカーが静かに強いのも納得です。
チタンは「持った瞬間」で分かる素材

グレード5チタンの良さを短時間で体感したいなら、ケースに体積のあるモデルが一番分かりやすいです。
同じサイズなのに、手に取った瞬間に「軽い」と感じます。そして外装のクオリティの高さも感じさせる。
こうした「加工できるグレード5チタン」を真面目にやっているブランドの代表格のひとつが、TUTIMA GLASHÜTTEです。
そういう一本を、コントワーヌではご覧いただけます。
店舗情報
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