パテックフィリップ カテドラル

4つか2つあるいは1つ

4 or 2 or 1 watch barrels


4つか2つあるいは1つの香箱の話です。3は今まで見た事ないので、持っている方がいれば見せて頂けると嬉しいです。
香箱とは機械式腕時計に欠かせない動力源(ヒゲゼンマイ)が格納されています。
つまり香りの話ではなく、腕時計のムーブメントのブログです。

ツインバレル”二重香箱”とは香箱(時計の動力源のゼンマイが格納されています。)日本以外ではツインバレルと呼ばれています。
16世紀に一般的に手巻き時計しか存在しなかった際、時計の動力確保の効率化、正確性を高める為、香箱が生み出されました。

1787年からルイ・ブレゲが自動巻きの発明をした(ペルペチュエル = パーペチュアルの意)後も腕時計は進化を続けて、1954年にはビューレン社がマイクロローターを生み出しました。ここでマイクロローターの動力源の弱さを補う為、本来手巻き時計に持ちられてきた二重香箱が用いられています。ミニッツリピーター等で補うためのアイソレーター機構は機械式時計が最も苦手とするのが落下などの衝撃です。特に、精度を司る心臓部であるテンプの中心にある天真(てんしん)という軸は、非常に細く(髪の毛ほど)折れやすい部品です。この天真を衝撃から守るのが耐震装置です。 天真を支えるルビーの受け石に「バネ」を取り付けた構造になっています。強い衝撃が加わると、このバネがたわんで衝撃を吸収し、天真が折れてしまうのを防ぎます。
代表的なもの: インカブロックやキフショックなどが有名で、現在製造されているほとんどの機械式時計に搭載されています。
例えるなら、精密機器を輸送する際に、箱と機器の間に緩衝材(プチプチなど)を入れるのと同じ考え方です。(地味な時計屋らしい発想ですが...)

そして肝心の香箱の話

まずは4つ。

ショパール L.U.C クアトロ(コートドジュネーブの模様は部品毎で異なる)

9日巻きの時計と言えば、そうパテックフィリップとショパールです。
明確に記載されていれないのですが2025年作のパテックフィリップも四重香箱(カドラプル)を組み合わせています。ショパールはL.U.C クアトロで表現しています。
とてもすごい発明なので時計業界をびっくりさせました。
ただし難点が一つ。治すのが難しい(心臓4つあるとどこが調子が悪いのかわからず、いろんな病院のMRIを徘徊しなければなりません。)複雑だからこそ管理は大変なのは大規模システムと変わりません。


次に2つ


CZAPEK SXH1 (ムーブメントの仕上げに画取りを行っている完成品)

さて、香箱の重要性を説明したところで、こう思った方もいらっしゃると思います。
結局いくつもの香箱を沢山並べたら良いのでは?ただし弱点があります。
アイソレーター機構で制御を行い、下記の時計修理でよく見かける現象をクリアして行かなければ、香箱が増えるだけすぐに壊れてしまいます。
1. ゼンマイの劣化:
長期間の使用や過度な使用によって、ゼンマイは疲労し、エネルギーの蓄積量が低下する可能性があります。この場合、時計の精度が落ちたり、動きが不安定になったりする可能性があります。
2. 香箱車の損傷:
香箱は歯車であり、衝撃や過度な摩擦によって歯が欠けたり、摩耗したりする可能性があります。これにより、時計が動かなくなるなどの故障につながる可能性があります。
3. 油切れ:
香箱の内部には潤滑油が塗られていますが、油が不足したり、劣化したりすると、香箱の摩擦が増加し、動きがスムーズでなくなる可能性があります。
ただし、安心してください。二重香箱をムーブメントに組み込む技術は非常に複雑です。四重香箱などは至極精密な機構がいくつも積み重なっています。
パワーリザーブが長ければ良いというわけではなく、シンプルさを追求しているフィリップデュフォーの作品などはある意味貴重で長持ちで飽きが来ないかもしれません。個人的には壊れにくい、二重香箱の手巻き時計が好きですが。 

代表例でいうとランゲアンドゾーネのツァイトヴェルク(ツァイトとは時間の意味です。)、チャペックのケデベルク SXH1(7日間巻き)、グランドセイコー 9SA5(80時間パワーリザーブ) 、ブレゲのクラシック ツインバレル ブルガリのオクト(他にも有名な時計がたくさんありますので興味ある方は調べてみて下さい。)
その為、機械の保守性を考えると2つの2重香箱が無難で、時計師としても片方の香箱を直すか停止させ、どちらが悪さをしているのか判別を付ければよいからです。

最後に一つ。

OMEGA Cal.321 (時計業界では伝説のOMEGA社のムーブメント)


一般的な機械式です。シンプルな構造なのでとても直しやすいです。
一つと言っても、オメガ(スウォッチ・グループ)等に使われているパワーマティック等は現代的でコスパも良く素晴らしいムーブメントだと思います。
嘆かわしい点は見た目の問題でシースルーバックの腕時計に蓋をかぶせてしまう腕時計が多いという物悲しさもあります。機械式時計の動いてる様子見たいですよね?私は見たい!安価なムーブメントを装飾なしで蓋をしてしまうのは物悲しい。

最後の紹介するのが、フィリップ・デュフォーのシンプリシティです。フィリップ・デュフォーは二重香箱の作品もいくつか作っていますが、「シンプリシティ」はその名の通り単純かつどの時計師でも直せるように工夫されています。時計をバラせば分かります。
腕時計になぜ魅力があるのか、というを耐久性と美でその問いに答えています。
しかし香箱が一つでコストパフォーマンスが良い時計も悪くないですし、十分楽しめます。腕時計は見た目なのか機能なのかという問題....
筆者は同じ腕時計を暫く使って、また次の時計を買ったら休ませ、新しいストラップなどに交換して最初の腕時計から使うのが好きです。

さて興味がある方はオーデマ・ピゲ、ジャガー・ルクルト、ブランパン、ブレゲ、ダニエル・ロート、ジェラルド・ジェンタ、それにムーブメントメーカーのレマニア、フレデリック・ピゲ等も調べてみて下さい。国産のセイコー、シチズン、オリエント、ミナセも面白いです!
機械式時計の話はまだまだ楽しめます!皆がたいてい持っているアレ。会議中に着信音がなったり、録音して上司に怒られたり、隣の方と同じ時計で気まずくなる、デート中に真っ黒な文字盤と戦うアッ●ルウオッチから、次の世界へ足を延ばしてはいかがでしょうか?着け方によってはアッ●ルウオッチもガジェットとしてカッコ良いです。個性在りです。(It's just a good excuse.)

はい。時計屋はマニアです。電車で吊革につかまった時、隣にブレゲやランゲを付けている方がいるとそれだけで無言で地味に幸せになります。(Watchmakers are a fetish...)
たとえ自分がその場でG-SHOCKを付けてても(このブログを書いている現在、2025年で1万円の腕時計だって付けてて楽しい!集めてて楽しい!)
ステレオタイプではないファッションはやはり楽しいと思います。ファッションの数だけ時計のスタイルもあります。電池式もメカクォーツや音叉時計等楽しい時計がたくさんあります。

腕時計の魅力を語る熱量で香箱から話がかなり脱線しましたが、機械式の動力源は基本的に4つか2つあるいは1つと考えて頂ければ分かり易いです!腕時計の世界へようこそ。

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